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日隅一雄・情報流通促進賞2020大賞決定!

 今年で8回目を迎える「日隅一雄・情報流通促進賞」の2020年度の大賞に、3.11当時の消防士の活動に光を当てたルポルタージュ『孤塁 双葉郡消防士たちの3.11』(岩波書店)を執筆したフリーライター吉田千亜さんが選ばれました。

 このほか、ヘイトスピーチに反対する市民の「カウンター行動」を映像記録した秋山理央さん、情報公開を通じて辺野古新基地建設予定地等の軟弱地盤を明らかにした北上田毅さん、映画「プリズンサークル」を制作した坂上香さんの3人が奨励賞に、自主避難者への住宅提供打ち切りをめぐる国の関与をスクープしたテレビユー福島および木田修作さんが特別賞に選ばれました。

 

 

受賞理由

<大賞>

吉田千亜さん

(書籍「孤塁 双葉郡消防士たちの3.11」執筆活動)

本書は、3.11東日本震災当時の消防士の活動に光を当てたルポルタージュです。「3.11」をめぐる人間ドラマを描いた作品は様々ありますが、消防士に光を当てたものは他に見当たりません。また60人以上の関係者が実名で登場する点でも類例を見ない優れたものです。震災発生当時の混乱と人々の動きがまざまざとよみがえるような、記憶にとどめるべき記録を残した執筆活動が高く評価され、大賞に決定しました。

<奨励賞>

秋山理央さん

(ヘイトスピーチに反対する市民のカウンター行動の映像記録活動)

秋山理央さんはヘイトスピーチに対抗するカウンター行動を中心に、市民の取り組みを精力的に取材して、動画で情報発信を続けてきました。迫力ある現場の映像をコンパクトに編集して、ネット上にアーカイブすることで、一般市民にアクセス容易な情報流通の促進を行っている秋山さんの活動は、まさに「情報流通促進」活動そのものであると考え表彰します。

<奨励賞>

北上田毅さん

(辺野古新基地建設予定地等についての情報公開請求活動)

 

北上田毅さんは、精力的な情報公開請求により、沖縄の米軍基地建設に関する問題点を明らかにしてきました。中でも、高江のヘリパッド工事の建設費が当初の予定から数倍に膨らんだ事実や、辺野古米軍新基地予定地の軟弱地盤問題をいち早く指摘。土木技術者の経験を生かして難解な一次情報を読み解き、「マヨネーズのような地盤」と一般の人々にわかりやすい表現で解説するなど、民主主義に欠かせない情報公開・発信に取り組んできた実績が評価されました。

 

<奨励賞>

坂上香さん

映画「プリズンサークル」制作活動

 

本映画は日本の刑務所に初めてカメラを入れ、2年間にわたって取材したドキュメンタリー映画です。これまでカメラが捉えることのなかった受刑者の姿を見つめることにより、日本社会そのものを問い返すような力を感じさせるとともに、本作で取り上げられた「回復共同体プログラム」がモデルケースとなって、国内の刑務所における処遇の変化が期待されます。「刑務所」に対する一般的なイメージを覆す迫力ある本作品の制作活動が同賞に値すると評価されました。

 

 

<特別賞>

テレビユー福島・記者木田修作さん

(住宅提供打ち切り問題のスクープ報道等)

 

テレビユー福島および同社記者の木田修作さんは、福島原発事故において、公式の記録からも除外されている自主避難者に注目し、複雑な県内事情をかかえる福島県のローカルニュースで報道しました。この報道自体が、想像を超える努力の成果と考えられます。地元で報じにくいことを、情報公開などの手法を駆使して、ファクトをもって冷静に伝え、情報流通を行った活動は、情報発信によって公正な情報の流通・促進をはかるものとして表彰します。