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日隅一雄・情報流通促進賞2024大賞決定

 

 

今回で12回目を迎える日隅一雄・情報流通促進賞2024の大賞は、自民党パーティー券裏金問題についてスクープしたしんぶん赤旗日曜版とこれを踏まえて調査を重ねて実態を明らかにした上脇博之さんの自民党「裏金」調査活動に決定しました。

 

奨励賞には、戦争中の最大のマスメディアがどのような内容だったのか、なぜそれが戦争を鼓舞する働きをしていたのかを明らかにした大森淳郎さんの書籍「ラジオと戦争 放送人たちの『報国』」執筆活動、東電と大手法律事務所との癒着の構造を明らかにし、最高裁裁判所の信頼性や公正性について問うた後藤秀典さんの書籍「東京電力の変節―最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃―」執筆活動、関東大震災における朝鮮人虐殺が国や県による通達(移牒)が風評を作り出したこと、虐殺を隠ぺいするために殺人の実行犯に国や県が組織的に免責に動いていたこと明らかにした関原正裕さんの書籍「関東大震災 朝鮮人虐殺の真相―地域から読み解くー」執筆活動が選ばれました。

 

特別賞には、大川原化工機をめぐる不正輸出事件について、どのような過程をたどって“冤罪”が起きたのかを、綿密かつ広範な取材の成果を示すことによって社会に問うた石原大史さんのテレビ番組「“冤罪”の深層」作成活動、治安維持法が日本国内だけでなく植民地化した地域においてどのように運用され、どのように執行されたのかを史料をもとにひも解き、とりわけ、思想検事による取り締まりや捜査等を詳細に明らかにした荻野富士夫さんの書籍「治安維持法の歴史」シリーズ全六巻の執筆活動が選ばれました。

 

 ◆表彰式は以下の要綱で6月8日に開催いたします。

【日時】6月8日(土)開場13時半 表彰式 14時~15時 

【場所】プラザエフ

https://plaza-f.or.jp/access

【参加費用】:無料(どなたでもご参加いただけます)

 

 

<大賞>(副賞50万円)

・しんぶん赤旗日曜版・上脇博之さん

自民党「裏金」調査活動

 2022年11月、しんぶん赤旗日曜版が自民党パーティー券裏金問題についてスクープし、これを踏まえて調査を重ねて実態を明らかにした上脇さんの活動によって、自民党という政党の根深い政治とカネの問題が明らかになりました。政治のあり方に対する社会的関心を喚起した功績は大きく、また、政治資金収支報告書という誰でもアクセスできる情報を使った調査は、市民に開かれた調査報道の可能性を拓き、若い世代も含めて民主主義を自分たちに取り戻す可能性を示しました。

 既存メディアが取り組まなかった問題に、忖度なしに取り組んだしんぶん赤旗日曜版の調査報道、それをさらに深掘りして実態解明を進めた上脇さんの取り組みは政治とカネの問題について広く社会に情報を流通する活動として表彰に値すると考えます。

 

<奨励賞>(副賞30万円)

・大森淳郎さん

書籍「ラジオと戦争 放送人たちの『報国』」執筆活動

 戦前、戦時中に国民が享受していた最大のマスメディアはラジオで、日本放送協会(現在のNHK)がその放送を国策として担っていました。それらの放送に関する記録・資料は敗戦と同時に破棄されましたが、大森さんは、NHKにわずかに残っていた資料を手掛かりに、奇跡的に残っていた音声資料などを各地に自ら出向いて発掘し、同時に生き残っていた当時の放送関係者(アナウンサーや記者ら)から証言を採取して、ラジオが何を伝えていたのかを掘り起こした集大成が本書籍です。

 新聞、ラジオ、テレビに加え、SNSによって世の中の情報の流通のありようが大きく変容している今、戦争中の最大のマスメディアがどのような内容だったのか、なぜそれが戦争を鼓舞する働きをしていたのかを知ることは、現在の情報流通の在り方を考えるうえでも、貴重な試みであると考え、表彰します。

 

・後藤秀典さん

書籍「東京電力の変節―最高裁・司法エリートとの癒着と原発被災者攻撃―」執筆活動

 最高裁第二小法廷は、2022年6月17日に福島原発事故に関して国の責任を否定する判決を出しました。後藤さんはこの判決に驚き、判決を書いた最高裁判所判事とはどのような人かに関心を持ち、取材に取り組みました。取材の中で、巨大な法律事務所、東電が最高裁判所判事の経歴や退官後の行先と重なりあうことなどで、裁く側と裁かれる側が入れ替わっていることを事実として明らかにしました。

 これまで明らかになってこなかった東電と大手法律事務所との癒着の構造を、丹念な調査の上明らかにし、最高裁裁判所の信頼性や公正性について問う本書は、公正な情報の流通を促進するという本賞の趣旨に合致すると考えます。

 

関原正裕さん

(書籍「関東大震災 朝鮮人虐殺の真相―地域から読み解くー」執筆活動)

 関東大震災では流言飛語で朝鮮人虐殺が発生したとされていますが、国や県による通達(移牒)が風評を作り出しました。警戒を指示された自治組織によって朝鮮人一般に対する虐殺が発生したこと、そのことを隠ぺいするため、殺人の実行犯に国や県が組織的に免責に動いていたことを、本書は史料から明らかにしています。

 教育現場の過重労働が問題になっている中でも、埼玉県立高校で長く社会科教員として教鞭をとってきた関原さんが、埼玉県内で被害者も実行者も特定されている事件を調査する中で事実を明らかにしていくその過程は、地域に根差し、地域の情報を掘り起こした情報を広く流通させる、市民・研究者としての取り組みとして表彰に値すると考えます。同じような問題が各地にあることが示唆される内容で、昨年、朝鮮人虐殺事件から100年を迎える中、さらに各地での同様の事実の掘り起こしが期待されます。

 

<特別賞>

石原大史さん

テレビ番組「“冤罪”の深層」作成活動

 戦後最悪の警視庁公安部による冤罪事件ともいえる、2020年に摘発された大川原化工機をめぐる不正輸出事件。社長ら3人が逮捕され、うち1人は拘留中に病気でお亡くなりになりました。同社が製造輸出していた噴霧乾燥機が中国において生物兵器に転用されるおそれがあるとの警視庁の見立てでしたが、それが経済安全保障という政権の姿勢にすり寄った捜査機関の所業であったことが明らかになりつつあります。石原さんらNHKスタッフが制作した『“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~』及び続編2番組は、警視庁公安部からの内部告発をもとに、事件の捜査にあたった捜査員、取り調べを受けた大川原社長、死亡した役員の遺族らの証言をもとに、どのような過程をたどって“冤罪”が起きたのかを、綿密かつ広範な取材の成果を示すことによって、社会に問いました。

 これほどまでに公安事件捜査の問題点に肉薄した番組は類例がなく、「人質司法」「政治と警察」など多くの論点・問題点を世に提示した功績は大きく、表彰に値すると考えます。

 

・荻野富士夫さん

書籍「治安維持法の歴史」シリーズ全六巻の執筆活動

 治安維持法が日本国内だけでなく植民地化した地域においてどのように運用され、どのように執行されたのかを史料をもとにひも解き、とりわけ、思想検事による取り締まりや捜査等を詳細に明らかにしています。「空気」や有形・無形の政治的な圧力で表現の自由が狭まり、冤罪事件が作り上げられていく過程は、これが決して過去の問題だけにとどまるとはいえないことを強く訴えかけているようです。

 秘密保護法、経済安保法の問題など治安維持法がよみがえるような今の状況において、治安維持法にまつわる状況が過去の問題ではなく、これからも私たちも縛り付ける可能性があることを問いかける本シリーズの意義は、世に知られていない情報を流通させる活動として表彰に値すると考えます。